岡山のみらいを創造する「プロフェッショナル人材活用プロジェクト」
「Society5.0」DX推進 戦略マネージャー(副業)
長谷川 大貴(はせがわ だいき)

「副業人材の活用」と「プロフェッショナルの知見」の化学反応は、地方自治体変革のエンジンになる

1986年生まれ。京都大学工学部卒業、京都大学工学研究科修了。2011年4月、東京電力株式会社にエンジニアとして入社し、東日本大震災直後の火力発電所の緊急設置工事に従事。2013年9月、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社に入社。関西オフィスで、西日本企業の経営改革に注力。SCM改革、M&A支援、デジタル中計の立案、ITを梃子(てこ)にした業務改善など、さまざまなプロジェクトに従事。2018年4月、株式会社エクサウィザーズに入社。西日本エリアの企業や自治体に対し、AI活用に関するコンサルティングから、AI開発、データ活用を梃子としたビジネス構想、スマートシティ構想の検討など、多数のプロジェクトをリード。2021年4月に執行役員就任。2020年8月より、岡山のみらいを創造する「プロフェッショナル人材活用プロジェクト」における「Society5.0」DX推進 戦略マネージャーとして、岡山市役所で副業を実践。

※役職は、インタビュー実施当時(2021年4月)のものです。

2020年6月、みらいワークスは<岡山のみらいを創造する「プロフェッショナル人材活用プロジェクト」>の人材募集を行ないました(※1)。これは岡山県岡山市という地方自治体の課題を解決するプロジェクトに、副業・兼業という働き方で参画するプロフェッショナル人材を受け入れる取り組み。616名もの応募者の中から最終的に選ばれたのが、3職種5名のプロフェッショナル人材です。5名のうち2名は、フリーランスのプロフェッショナル人材が「兼業」として参加。残り3名はそれぞれ本業をもつ方が「副業」としてこのプロジェクトに参加しています。

その3名のうちのおひとりが長谷川大貴さんです。長谷川さんは、ふだんは大阪にお住まいでAIベンチャーの執行役として業務に従事。そのかたわら副業として、今回のプロジェクトで岡山市役所との仕事に携わっています。大企業、コンサルティングファーム、ベンチャー企業と豊かな職務経歴をお持ちの長谷川さんに、本業と副業の関わり、地方自治体との仕事に対する思い、民間企業と地方自治体の違いなどについて、お話をうかがいました。

※1:岡山のみらいを創造する「プロフェッショナル人材活用プロジェクト」の兼業・副業限定「戦略マネージャー」の募集を開始しました。

念願の「地方自治体との仕事」を可能にしたのは「リモートでの副業」という働き方

長谷川さんはふだん、AIベンチャーである株式会社エクサウィザーズで仕事をなさっていますね。

長谷川さん(以下、敬称略):私はエクサウィザーズの京都オフィスで働いており、西日本エリアの企業や自治体を中心に、AI開発・導入やデータ活用などのプロジェクトに関するコンサルティングからAI実装を担当しています。

現在日本政府は、医療、教育、行政手続きなどのさまざまなサービスに先端技術を活用し、住みやすい都市を地域住民の方々に提供するという「スーパーシティ構想」を提唱しています。私が住んでいる大阪市はその構想に積極的に取り組んでいる自治体のひとつで、私も業務として市のスーパーシティ構想の実現に向けた検討に携わり、自治体の方々とDX推進についてディスカッションなどを行なうこともあります。

そうして今回、<岡山のみらいを創造する「プロフェッショナル人材活用プロジェクト」>にご応募くださいました。長谷川さんはもともと、地方自治体との仕事や副業をもつことに関心をおもちだったのでしょうか?

長谷川:はい。私はもともと、地方のスマートシティ構想に関する取り組みや地方創生の案件などに関心がありました。ですから、現在の業務の中で地方自治体と直接関わる仕事ができることにもやりがいを感じています。

ただ、「民間企業と自治体」という関わり方ですと、あくまで「自治体の外部の立場」として関わることになります。例えば何かを提案したとしても、自治体の内部でどのように受け止められているのかといった感触は、外からはなかなかわかりづらいところがありますし、一定以上は踏み込めません。それはしかたない部分ではあるのですが、もっと深くコミットできるポジションで、自治体の課題や悩みなどを内部の方から直接うかがって、一緒に考えていくことができたら……と思うことはありました。

副業については、地方自治体での仕事に特別こだわって探していたわけではないのですが、地方の企業の人材募集を目にすることもありましたし、そうした案件の紹介を受けることもありました。ですが、当時はリモートワークがまだ浸透していない時期。ちょっと遠い地域の仕事で定期的に通うとなると、行って帰ってくるだけで1日が終わってしまいます。そういう関わり方で副業として地方の仕事をするのは、現実的に難しそうだなと感じていたのです。

今回のプロジェクトの募集要項に応募しようとお考えになった決め手は?

長谷川:とても魅力的に映ったのは、副業または兼業の人材を募集していた点です。地方の仕事に深くコミットしたいという思いはあったものの、地方への転職となると事が重大ですし、現在の仕事にも思い入れがありますので、副業で、かつリモートで活動できるという点は大きいポイントでした。また、提示されたミッションは本業とリンクする部分が大きく、本業で培った力を地域のために活かすことができるのはもちろん、副業で学んだことを本業にも活かせるのではないかという考えもありました。

それともう一つ、私は香川県出身で、岡山県には学生の頃から何度も遊びに行ったり旅行をしたりしていたことから親近感があったということも、応募を決める大きな要因になっています。地方の仕事と一言でいっても、地域の特性は多種多様ですし、課題や求めていることも各地それぞれ。そうしたなかで地域のお役に立ち、自分自身もやりがいを感じられるような仕事をするには、「その地域に愛着をもてる」ということが大事だと思うのです。

自分にとって思い入れのある地域の役に立つ機会を、副業で得られる。自治体の方々と、社交辞令ではない率直な話をして、一緒に考えていくことができる——。これはまたとない機会だと思いました。

DX推進の第一歩は「岡山市ならではのDX」のテーマ探しから

今回のプロジェクトでは、長谷川さんは「Society 5.0」DX推進 戦略マネージャーに就任し、岡山市の職員の方々と協働なさっています。DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するマネージャーとしてのミッションや活動を教えてください。

長谷川:今回のプロジェクトでは、私ともう一人の方が「Society5.0」DX推進 戦略マネージャーを拝命しました。「Society5.0」で描かれるスマートな未来へ日本が向かっていこうとするなかで、日本各地には人口減少をはじめとする数多くの社会課題があります。岡山市もその例に漏れず、さまざまな課題を抱えている地域のひとつ。そうした社会課題を、先端技術を活用しDXを推進することによって解決へ導き、岡山市民の方々が充実した生活を送れるような道筋を考えていく、というのがこの役職のミッションです。

とはいえ、岡山市の職員の方々から見れば、そもそも「Society5.0」や「DX」が何を指すのか、先端技術を活用するといっても何ができるのか、何がどうよくなるのか、というのはなかなかイメージがつかみきれないところでした。ですので、まずはいろいろな部署の方にお話をうかがい、市職員の皆さんがお持ちの課題感やデジタル化のテーマをヒアリングしたり、ほかの自治体の事例を紹介してディスカッションしたり、といった活動を中心に行なってまいりました。いわば、「岡山市の特徴に合わせた、岡山市ならではのDX推進、岡山市らしいスマートシティのあり方」のネタ探しといった段階です。

「岡山市の特徴に合わせた、岡山市ならではのDX」とは、具体的にどのようなものをお考えですか? 差し支えない範囲でおうかがいできれば。

長谷川:例えば、岡山市では「おかやまケンコー大作戦」という取り組みを実施しています。これは、岡山市在住・在勤の方が、ウォーキングしたりジムに行ったり、身体に良い食事を摂ったりなど、健康維持・増進につながる活動をすることで「健康ポイント」が貯まり、その数に応じて商品券などの特典を受け取れるというものです。こうした取り組みはほかの自治体でも行なわれていますが、多くの地元企業が連携し、行政と民間企業が一体となって資金提供と事業運営にあたる「企業連携型ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)」としての取り組みは国内初です。

この事業では、参加されている市民の方々の健康に関する情報や活動データが蓄積されていきます。そのデータは今後、いろいろな活用が考えられると思います。個人に紐付く情報ですから、その取り扱いはもちろん慎重に検討する必要がありますが、ビッグデータの活用によって行政のサービスが向上する、あるいは予算の獲得につながり市民の方の役に立つサービスの継続が可能になる、といったことが実現できれば地域全体にとって有効ですよね。

これはディスカッションで挙がった話題の一例ですし、先ほどもお話ししたようにまだまだネタ探しの議論の段階です。ただこの例のように、岡山市がすでに取り組んでいることを活かしてオリジナルのDXを推進するということも十分考えられると思っています。幸い、今年度も継続してプロジェクトに携われることになりましたので、今年度はぜひ、ネタ探しの先、DX推進の具体的な道のりや、将来進んでいきたいビジョンを描くというところの議論もできればと思っています。

岡山市の仕事はリモートでなさっているのですか?

長谷川:はい、基本的にはWeb会議が中心です。岡山市にうかがうこともありますが、だいたい月に1回か2回ほど。「週1回、何曜日に訪問する」といった定例の予定があるわけではなく、直接議論したほうがいい場合や関係者の方に対面でヒアリングする場合など、必要性に応じて都度スケジュールを設定しています。岡山市の職員の方々はZoomなども問題なく使いこなしていらっしゃいますし、そうしたツールを使うことにもアレルギーはないようで、リモートでの仕事もスムーズです。

もう一方の戦略マネージャーの方とは“ニコイチ”で動き、一緒に考えることが多いです。その上で、準備や説明といった実務面はすり合わせしながら分担しています。都度話し合い、具体的に知見やノウハウが提供可能な方、より適している方が担当するといった具合です。

地方自治体の知見と民間企業の力を組み合わせれば、地域はもっとよくなる

長谷川さんは本業でも副業でも自治体と仕事をされていますが、民間企業と比べて感じる違いなどがあればお聞かせください。

長谷川:いろいろな場面で違いを感じることはあります。大きな違いを挙げれば、民間企業は「いかに事業を拡大させていくか」という観点が重要度・優先度の高い目的になることが多いですが、自治体は「住民の方々の満足度や幸福度をいかに高めるか」という視点でお考えになるのだな、ということをよく実感します。

その分、予算も自治体特有の時間軸で計画されており、提案をその時間軸に合わせないと実現させるための予算を獲得することができません。自治体で何かを動かそうとするなら、そうした点を押さえて先手を打つ必要があるということも学びました。

あと、やはりと言うか、自治体のオフィスにはまだまだ紙が多いですね。私自身はエクサウィザーズに転職してから紙に印刷したことがほとんどなく、商談もパソコンで投影してプレゼンテーションしていますので、「各種申請や業務が紙中心に回っている」という環境がまだ根強くあるということを改めて知る機会になりました。

「副業での学びを本業に活かせている」という実感はありますか?

長谷川:活かせているかどうかはわかりませんが、自治体のあり方や仕事の仕方などに関する理解が深まったという実感はあります。

民間企業として外部の立場で自治体と仕事をすると、「こうすればきっとよくなるのに、どうしてしないのだろう」と思うことや、自治体に対して何かを提案しても「ちょっと考えてみます」という返答のまま話が止まってしまうといった経験をすることがあります。でも、実際に自治体の内部に触れてみると、自治体において何かを変えるというのは、想像以上に難しいものなのだなということがよくわかりました。

それと、自治体職員の方々が抱えている悩み、課題についても、実際の現場で直接見聞きしなければ知り得なかったようなこともたくさんありました。今回のプロジェクトで自治体職員の方々にいろいろなお話をうかがうことができているのは、私にとって大きな学びとなっています。

「自治体のこういうところを民間企業も取り入れたらいいのではないか」と思う点、「民間企業のこういうところを自治体が取り入れるといいのではないか」と思う点があれば、ぜひおうかがいしたいです。

長谷川:機能や長所を取り入れるというよりは、自治体と民間企業がどのように協働するといいかという話になってしまうかもしれませんが……。

自治体の方々は、管轄する地域のことを非常によくご存じですし、その地域や住民の方々のずっと先のことまで考えていらっしゃいます。そして実際、自治体内部の方々にはさまざまなアイデアがあります。しかし、自治体という存在や自治体職員の方々が自ら変革を主導するというのは、往々にしてハードルが高い。そのハードルを超える機動力として、民間企業の力を積極的に活用することができるといいのではないかと思います。

民間企業がもつ、プロジェクトを動かすリード力やノウハウ、技術に関する知見、そして外部の立場だからこそ持ち得る気づき——。民間企業からの提案は、自治体にとっては「外部からの指摘」という良い意味での“外圧”にもなり得ます。こうした特性を、自治体の方々の視点やアイデアと組み合わせることで、地域をよくするための活動がさらに進むようになればいいなと思います。

副業人材の活用が、地域に新たな価値創造を生み出す土壌に

地方自治体におけるDX推進、岡山市のDX推進について、今長谷川さんが考えていることは?

長谷川:地域をよくするためのDX推進の取り入れ方としては、「①地域としてよくしていく施策」と「②自治体としての業務を改善していく施策」があります。

例えば、先進技術を活用して交通系の新サービスを実現するというのは①にあたり、市役所の業務で紙に手書きしていたものをデジタル化するといったものは②にあたります。地域社会のDX化と言う意味でいえば、①のDX推進をイメージします。ですが、現場を拝見しいろいろな方のお話をうかがうと、DX推進の段階として②の自治体業務をデジタル化するといったところから含めて改善していく、という取り組みも不可欠だと感じました。

そして、その自治体業務の中には、行政手続きなど住民の方々が直接関わる部分もあります。そこにDXを取り入れ、オンライン申請や、申請受理後の処理をRPA(ロボットによる業務自動化)で自動化するといったことを実現できれば、住民の方々の手続きに関する負担や処理完了までの時間が減り、結果として①のDX推進にもなるのです。そういうバランスを考えながら、今後も引き続き、岡山市の課題やニーズ、地域特性を踏まえたDXを考えていきたいです。

 今回のプロジェクトを通じて、地方自治体との仕事についてお感じになったことがあれば、お聞かせください。

長谷川:自治体の職員の皆さんは真面目でピュアな方が多く、良いと思ったものを柔軟に取り入れて自分のものにされる姿勢があると感じました。そういう方々や特に若手の職員の方々が、民間企業やプロフェッショナル人材など外部の知見にふれて新しいことを吸収する機会が増えれば、今後の自治体のあり方は大きく違ってくるのではないでしょうか。

今、私は、岡山市の「おかやま若手政策実現プロジェクト」にアドバイザーという立場で参加させていただいています。これは、若手職員の発想やアイデアを新規事業の創出や政策提言につなげることを目的に、20代を中心とした若手の職員さんをいろいろな部署から募り、岡山市の未来に向けてさまざまなアイデアを考えるという取り組みです。

そこで出たアイデアに「ここをこうしてみては」とちょっとしたアドバイスをすると、次の発表で格段に良くなっているということが本当に多いのです。その変化を目にするのはうれしいですし、そうして変化を遂げていく若手人材の発想を取り入れ、岡山市が今後どのように飛躍していくか、考えるととてもわくわくします。

今回のプロジェクトでは副業・兼業人材を採用し、若手政策実現プロジェクトでは若手職員発信のアイデアを大事にするなど、岡山市は全国の自治体のなかでも先進的であると思います。実際、こういう働き方、自治体との関わり方をしていると話すと珍しがられますし、それだけ貴重な仕事に携わる機会を得られたことをうれしく思っています。

今の日本では、知見や仕事が東京を中心とする都市に集まりすぎています。今後、副業という働き方やリモートというワークスタイルがもっと広がり、今回のようなケースが珍しくなくなるほど広がれば、その知見や仕事を日本各地に広げることができるようになるはずです。そして人材の活用が全国で活性化すれば、地域と人材による化学反応が各地で起こり、新たな価値創造が生まれやすくなるのではないでしょうか。そういう意味でも柔軟な働き方、人材の受け入れ方が広まることを願っています。

その第一歩になれるよう、私も引き続き、岡山市の仕事に邁進するつもりです。岡山市職員の方々には、仕事での関わりを通じて、私たち戦略マネージャーがもっている外部の知見を思う存分吸収してほしいですし、私もそのお役に立てるよう務めたいと思います。

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